トランプ大統領誕生とアメリカの保守主義(暫定版)

久々の更新です(まだ閉鎖してませんでした!)。

アメリカの大統領選でトランプがまさかの当選をしてしまい、
著名人や有名アーティストもこの選挙結果に不満を抱き
トランプへの反対運動などを行うなどアメリカは大荒れになっています。

この現象が「わからない」という人もいると思われますので、
そういう方々のために、なるだけわかりやすく解説しようと思います。

実は、トランプのスタンスは、
アメリカの本来の保守主義というものを体現していると言えます。
つまり、白人優遇で、その上で白人には権利の平等を与え、
その上で競争させて、不平等な結果が出ても自己責任、というもの。
同時に、ゲイ(同性愛者)を否定して、ゲイに関しては、
権利の平等を与えるどころか法律で罰するということまで言う。

これに対し、リバタリアンリバータリアン)という保守主義もありますが、
白人優遇を否定して、すべての人種やゲイにも平等に権利を与えて、
競争をさせて、競争で出た結果に不平等が出ても自己責任、というものです。

(前々からこのサイトで書いていますが、日本の大手マスコミは、
未だに、このリバタリアンリバータリアン
の思想を左翼思想と誤解したまま信じ込んでいるようです。
日本の大手マスコミは今回のトランプの当選で、
トランプが在日米軍を撤退するといっている人なのにもかかわらず、
アメリカで著名なアーティストなどが猛烈に反対しているということに戸惑いがあるようですが、
この件については、また落ち着いたら改めて書くかもしれません。
ちなみに東浩紀は数年前に、この勘違いを改めて自分はリバタリアンであると宣言しました。)

リベラリズム(一般的に言われる左派のリベラル)は、
白人優遇を否定して、すべての人種やゲイにも平等に権利を与えて、
競争をさせて、競争で出た結果に不平等が場合は、
自己責任ではなく、ある程度の結果の平等も保証する(所得の再分配をする)、
という思想になります。

権利の平等を与えて、競争の結果の平等は保証しない、
というのは極端な個人主義で、
これがアメリカの保守主義の資本主義(純粋な資本主義)の基本的な考え方です。

この考え方だと、社会に裕福層と貧困層という階層ができて、
この階層が、かつての封建社会の貴族と奴隷という階級に似てしまうので、
これを許すスタンスが資本主義の保守主義の最も典型的なスタンスとなります。

資本主義でも、競争の結果の平等もある程度は保証し、
所得格差が出た場合、税金として裕福層から所得を徴収し、
貧困層に所得を再分配をするのが、
社会主義的な資本主義ということになり、
このスタンスが「社会民主主義」「福祉国家」と言われます。

アメリカでは民主党が、この「社会民主主義」「福祉国家」を志向する政党であり、
それゆえに左派、と言われます。

そして、実は「社会民主主義」「福祉国家」というのが、
今の日本の本来の主義なのです。
というのも、日本国憲法を作ったのが、
民主党政権時代のアメリカだったからです(ルーズベルト政権)。

アメリカの共和党は、本来はトランプのような
「本来の保守主義」を志向する党なのですが、
民主党が人気があるため、やや民主党よりに変化しているのが近年までの傾向です。
(少なくともアイゼンハワー政権以降の)
民主党よりに変化しているアメリカの共和党を、
もっと本来のアメリカの保守主義に戻そう、というのがトランプで、
それゆえに、アメリカの田舎の方の州では支持が高いということになります。

アメリカの著名な芸能人やアーティストが、
みんなトランプの当選に反対しているのは、
アメリカの著名な芸能人やアーティストに左派、
つまり民主党支持者や、共和党の本来の保守主義
(前述の、貧困層に所得を再分配しない個人主義や、白人優先主義)
が嫌い、という人が多いからです。

貧困層に所得を再分配をするのが、なぜ社会主義的かというと、
そもそも社会主義共産主義)というのは、
個人の所得を否定して財産は全て共有とし、
それによって格差をなくして平等な社会を作るというものだからです。

その過程で、共産主義は一時的に独裁国家にして財産を全て国家が没収という
独裁主義の形態をとることがあり、北朝鮮や中国は、
この本来一時的なはずの独裁国家の形態が、ずっと続く国になってしまったことで
ああなっています。

ちなみに、共産主義でも一旦独裁国家にしないで、
財産を全て国家が没収する(徐々に税率を高くするなどして)、という考え方もあります。

一時的に独裁国家にして没収するのがマルクス主義で、
独裁国家にしないで没収するのがその他の共産主義
マルクス主義の元になった無政府共産主義)となります。
無政府共産主義の無政府とは、中央政権がなくなって、
市民が小さいコミューンで生活する、ということを無政府と言っています。
実は、マルクス主義も、最終的には独裁国家を自ら解体して
市民が小さいコミューンで生活するという状態を志向しています。

トランプはアメリカ国内が優先で、
海外のことは放っておく(基本、人道支援もしない)というスタンスで、
これは個人主義の延長に当たるナショナリズムで、
在日米軍を引き上げる、ということも言ったりするんですが、
そのかわり、自分の国は自分で守れ、という考え方ゆえに、
日本は核武装をしろ、といったりするのです。

白人優先主義も、自分が白人だからという個人主義の延長の白人優先主義なのです。
他の人種の人たちがどうなろうと、自分には関係ないから知ったこっちゃない、
というのが、個人主義の延長の白人優先主義で、トランプはこのスタンスです。

このあたりの事情は、佐々木毅アメリカの保守とリベラル (講談社学術文庫)』序盤や
副島隆彦『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』、
町山智浩越智道雄オバマショック』の前半部に詳しいのです。
(ただし、副島隆彦『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』は
著者の副島氏がリバタリアンなので、リバタリアンののスタンスで書かれているので注意が必要です)

やや話は逸れますが、町山智浩越智道雄共著『オバマ・ショック』(集英社新書)は
日本で誤解されていることの多いアメリカの保守とリベラルの本来の性質を説明しながら、
2008年のアメリカのサブプライムローンの破綻による金融不安から、
オバマ大統領の誕生までを解説した本ですが、
そういえば『内向型人間の時代』(講談社)によると、サブプライムローンの破綻は
外交型の投資家たちの強気な投資が原因ということが書かれていました。

『内向型人間の時代』によれば、
進化論的にも「内向性は人類のためになるために生き残ってきたはず(p22)」とし、
その上で、2008年のウォール街の大暴落(サブプライムローンの破綻)
は、押しの強い外向型の投資家たちが発言力を持ったのが原因、と分析されています(p207~210)。
そして内向型の投資家は、その慎重さ故に2008年の暴落以降でも損することなく、
逆に利益を得ていたそうです(p222~226)。

こういう説があると、進化論的にも内向的な性格は、本来は優秀な種の1つと言えると思うのですが、
これを否定して、内向型の人間をバカにする流行を仕掛けずつけた日本の大手マスコミと、
その影響を受けた大衆は、日本を危険な方向に導いているのかもしれません。

この『内向型人間の時代』によると、スピルバーグ(p9)やアインシュタイン(p216)
も内向的だったとあります。

 * * *
日本でのイジメの原因は、内向的な人をいじめる流行がずっと続いたことが原因と思われます。
詳細は下記のリンク先のブログの記事をどうぞ。
*ブログ「ワンダばステーション日記帳」内「いじめの原因も内向型人間への差別」

wandaba2019.hatenablog.com