上原正三氏、矢島信男氏が死去

今年に入って、上原正三氏が亡くなりました。
謹んでお悔やみを申します。

昨年11月末には矢島信男氏も亡くなりました。
謹んでお悔やみを申します。

上原正三氏が亡くなられたニュースは、
ネットニュースでかなり扱いが大きく、
やはり手がけた作品の膨大さや質が、
多くの人に評価されていたことをものがたるものでしょう。

矢島信男氏も亡くなり、今年は東映80年代特撮作品世代の
我々からしても馴染みのある方の訃報が相次ぎ残念です。
矢島信男氏も、かなりネット上では追悼コメントが多かったです。
上原氏同様、手がけた作品の膨大さや質が
多くの人に評価された結果と思います。
新聞では写真付きでした。

上原正三氏の訃報を受けて、
ネット上では帰ってきたウルトラマン
怪獣使いと少年』の再評価も高まっていますが、
ちょうど、訃報のニュースが出た前日に、奇遇にも
『巨獣特捜ジャスピオン』の北米版ブルーレイを入手し、
3話『守れ!銀河少年の夢』を見返していましたが、
この回は、かなり話のアイデアとしては、
怪獣使いと少年がベースになっていますね。

ココ少年が佐久間良少年、ナマゲラスがメイツ星人兼ムルチ、
ナマゲラスを危険視して殺処分しようとするシティ側が
メイツ星人をいじめる市民という形で対応しています。
(この『ジャスピオン』3話は矢島信男氏の特撮もすごいです)

今のところネット上では『怪獣使いと少年』を、
かつて切通理作氏がやったような
ニーチェニヒリズムの作品
(「世の中善も悪もない」というような)として
曲解した解釈が広まることはないようで安心しています。
(何度も書いてますが、あの回でメイツ星人をいじめているのは、
主に不良の三人組ですからね。)
あくまで差別、偏見を批判した作品として評価するべきです。

上原正三氏が亡くなる少し前の年末の時期に、
映画『テッド・バンディ』の監督の、
アメリカでは個人の自由が社会よりも優先されるべきだと信じている人が多いため、
個人の自由に抑制が効かなくなり、
社会的意識よりも優先されて犯罪を犯す原因になる」
というコメントが発表され、大手マスコミの記事で取り上げられました。
(該当箇所は下記のアドレスから読めます)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69316?page=4


日本の場合、知識人が、ニーチェの思想は
個人の自由を社会より優先させることで、
犯罪を肯定する思想である、と解釈して、
この解釈を広める場合が多いので、
この点については問題に思います。

この件については、前回の日記で触れているので、
そちらも合わせてお読みください。

wandaba2019.hatenablog.com

生前、上原正三氏がマイナビニュースでのインタビューで、
「子どもが内に秘めているエネルギーは、大人を凌駕するほど膨大です。
そんな子どもたちが「自分もあの人のようになりたい」と思わせるほどの魅力が、ヒーローには必要なんです。」
と言われていたのもよかったです。

上原氏の手がけた作品は、アニメでも特撮でもヒーロー路線のものが大半ですが、
そういった作品すべての総括的なコメントのように思いました。
https://news.mynavi.jp/article/20191208-934907/3

また、映画『テッド・バンディ』は、
犯罪者を主人公にしている映画ですが、
犯罪者を主人公にしながら、主人公を批判的に描いていて、
人間性の怖さを告発する内容ですが、
このように、本来、犯罪者を主人公にした映画というのは、
犯罪者を主人公にしたからといって、
犯罪を肯定しているわけではなく、
批判的に描くために主人公にするということもあり得るのです。

しかし、なぜか90年代以降の日本国内の映画批評は、
こういう視点がないまま、犯罪者を主人公にした映画は、
即、犯罪を肯定する映画として曲解して評価し、
ニーチェ的な犯罪の肯定論と結びつけたのは
未だに問題があったと思います。

上原氏が東映ヒーロー作品(アニメも含む)で書いた、
悪役が権力闘争をやって自滅するストーリーも、
悪役が主役になるからということで、
犯罪を肯定する作品として曲解されて
ニーチェ的な犯罪の肯定論の作品として解釈されたのが不幸でした。

また、上原正三氏が企画からかかわった作品
宇宙刑事メタルヒーロー、グレンダイザーなど)は、
主人公やヒロインの故郷が敵に侵略されて滅ぼされた
という設定が多いですが、
これは、大和民族による琉球王国侵略をイメージしているといわれています。

 

注)『巨獣特捜ジャスピオン』は、上原正三氏が企画から参加して
メインライターを務めた作品で、ブラジルでは社会現象になる
大ヒット作になった作品として有名です。

*ジャスピオンについてより詳しく書いた過去の記事です。

『手をつなぐ全銀河の人類たち』(2008-08-16)

wandaba2019.hatenablog.com

『ジャスピオンがブラジルで大人気』(2008-08-13)

wandaba2019.hatenablog.com

 

*テッドバンディは、犯罪者を主人公にしながら、犯罪を否定している映画と
述べましたが、このことに関連した過去の日記です。

wandaba2019.hatenablog.com