これから「ロールズ」の話をしよう

さて、最近マイケル・サンデル教授のNHKの番組がブームになっています。
NHKハーバード白熱教室
http://www.nhk.or.jp/harvard/

この、サンデル教授というのは、本サイトで立ち上げた当初から取り上げているリベラリズムの学者ロールズとは対立したこともあったコミュニタリアン共同体主義)の学者です。しかし、近年はロールズに対して一定の評価を与えているそうで、上記の『NHKハーバード白熱教室』やこれを書籍化した『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)では、かなりロールズを好意的に取り上げているようですね。

筆者は、サンデル教授に対しては一連のロールズ関連書籍で「ロールズの正義論にいちゃもんをつけた人」ぐらいにしか思ってなかったので、サンデル教授が人気、という話をきいて、当初は幻滅したのですが、ロールズにかなり高い評価を与えているようで安心でした。

*参考:サンデルの『NHKハーバード白熱教室』の公式ページで、ロールズについて触れている箇所です。
http://www.nhk.or.jp/harvard/lecture/100523.html

いまだに自分では『これからの「正義」の話をしよう』は読んでないですが、これのロールズについてふれた章をよんで、ロールズを知ったという一般人が多くなってきてうれしいかぎりです。サンデル偉い!感謝感謝です。

ちなみに、勝手にリンクしてしまいますが、そういう方のブログをひとつ紹介しましょう。
yahoo!ブログ『HAPPY HACKINGニュー速)』の
実力主義は正義でない ジョン・ロールズ』(2010/7/13)
http://blogs.yahoo.co.jp/nietzsche_rimbaud/60088986.html

この方は、サンデルの本でロールズを知って「ジョン・ロールズっていい人だ。」といっています。こういう人が全国に沢山いることを祈ります(上記のサンデルの本はアマゾンで売れ行き1位になったこともあるそうなので、おそらくそういう人は沢山いるでしょう!)

筆者は10年ぐらい前からジョン・ロールズについてこのサイト(ブログになるまえ)で取り上げていましたが、当時はまだフランス現代思想(フランス構造主義ニューアカデミズム)が全盛で、ロールズのことは国内では全然知られておらず、筆者がロールズの正義論なんていっても、存在すら信じてもらえなかったですからね。

それもこれも大手マスコミがフランス現代思想ばっかり持ち上げて、ロールズの正義論を無視していたからです。やはり大手マスコミの影響力というのはすさまじいですね。

佐々木毅(法学博士・前東京大学総長)による『アメリカの保守とリベラル』(講談社学術文庫)では、ロールズはデューイとならんでリベラリズムの代表的な学者として上げられていますからね(「序説 リベラリズム保守主義」(p9~)のp14)。そんなに代表的な学者が、なぜ21世紀になるまで日本国内で無視されていたのか、不思議でしょうがないですね。

筆者の周囲には、そういう大手マスコミの見落としを妄信して、筆者を見下してバカにしてくる人間たちもおおくて、ほんとに毎日悔しい思いをしましたよ。10年ちかい筆者の苦闘が、やっと報われるときが来た、という感じですね。

ロールズの正義論そのものを、また新訳で出し直してほしいですね(以前でたものは訳が難解だったそうで)まあ、本サイトで取り上げた川本隆史(東大教授)の出している『現代思想冒険者たち23 ロールズ──正義の原理』(講談社)』やチャンドラン クカサス, フィリップ ペティット著『ロールズ 「正義論」とその批判者たち』(勁草書房)の2冊でも十分ではありますが。これらの本を、今新装版にして出したら、けっこう売れるんじゃないでしょうかね。

おもえば、『ダヴィンチ』という雑誌は、大手出版マスコミの世論誘導というか、言論統制に一役かってますね。あれで取り上げた本というのは確実にうれますから、いわば大手マスコミの人間たちにとって都合のいい情報だけ世間に露出させて、都合の悪い情報の載っている本はマイナーにして売れなくしてしまうことで、事実上、言論統制を行っているといえるでしょう。『ダヴィンチ』あたりでもっと早くロールズ関連書籍が好意的にとりあげられていれば、ロールズはもっと早くメジャーになっていたのに、基本的に『ダヴィンチ』ではフランス構造主義系のものばっかりとりあげますからね。
いわば『ダヴィンチ』ってのは、現代版(リアル版)『華氏451』ではないでしょうかね)
本は自分で調べて買うべし!

*追記1(2010/7/20):上記の『NHKハーバード白熱教室』の公式ページで、
ロールズについて触れている箇所です。
http://www.nhk.or.jp/harvard/lecture/100523.html

*追記2(2010/7/20):日本で90年代にはやったデリダフーコーガタリなどは「フランス現代思想」にカテゴライズされます。これに対して、ロールズ、サンデル、ノージック、デューイといった学者は「アメリカ政治思想」に分類されます。

*****(以下、過去の日記の重要記事のリンクです。未読の方は是非お読みください)*****

90年代を頂点にして、日本では欧米文化への誤解から個人主義が左翼思想だとまちがえれられていました。この問題について詳しく言及した親サイトの文章や過去の日記のリンクを張っておきます。未読の方はどうぞ。

*親サイト『ワンダバステーション』『公と個の論争への検証』
http://www.geocities.jp/wandaba_station/koutoko.html

*このブログの過去ログ
2010/4/11『リベラル派の「自由」の意味とは』
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/61140438.html
2009/8/2『デューイの教育論への誤解?』
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/60088553.html
2009/8/9『前回のデューイの話の補足』
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/60120442.html
2009/7/18『「住人立ち退き問題」への誤解?』
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/60018587.html

ついでに60年代アメリカのドラッグカルチャーも長らく日本では90年代のロックブームを頂点に誤解されていました。本来はドラッグカルチャーというのは、ドラッグによって人間を人類愛に目覚めさせるという目的でおこなわれていました。このことについて詳しく知りたい方は以下のこのブログの過去ログをどうぞ。

2008/8/2『世界中の神を総動員』
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/56109867.html
2009/8/30『永田町悪魔払い?』
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/60213109.html
2006/1/18『サイケデリック・レンジャーズ』
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/23741545.html

本サイトでは現在の日本における非モテの問題もあつかっています。
個人的にはかなり決定的な分析ではないかと思っております(笑)。
2010/6/26『非モテ現象の真の原因はこれだ』
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/61428868.html

アナーキズムというのも、実はすべて左翼思想ではなく、
右翼のアナーキズムというのもあります。そのことの日記です。
2010/7/11『「空気が読める」は集団主義か?』
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/61483230.html