一億総「年収300万円化」政策

さて、今でている『週刊金曜日』では、辺見庸という作家のインタビューがあって、たしか2回にわけていて今回は2回目なのですが、わざわざ2回にわけてロングインタビューをやって、一体なにを言おうとしているのかとおもえば、結局「社会主義は虐殺がおこった」という話をだして、もうこの先どうしようもないとか、そんな結論の、90年代の文化人たちがよく言っていた類の意見で落胆しましたね。

この話では、やはりデンマークスウェーデンといった北欧の社会民主主義がうまくいっていることがオミットされています。いつまでこんな状態がつづくんでしょうか? 著名な文化人たちはみな裕福層なので、そうやって自分たちの所得を公共投資の財源にされないように、世論を巧妙を誘導しているようにしか筆者にはみえないんですよ。

これは、以前かきましたが、スウェーデンも90年代後半は赤字を抱えて景気がわるかったそうで、そのときに財政赤字削減案として高額所得者への一時的増税処置をやったそうです(藤井威『スウェーデンスペシャル(I)』(新評論)p146)。日本でもこういうことをやるべきじゃないでしょうかねえ。

そういえば、何度も持ち出しますが、最近でた集英社新書の『オバマ・ショック』(越智道雄町山智浩共著)によれば、後期クリントン政権も、福祉を重視しながら財政黒字をだしていたとあります。クリントン政権生活保護の不正受給(p29など)を減らす政策をやって財政黒字をのこし(p49)福祉も進んだ(p17)とのことです。
失業率も、ネットなどでしらべると、クリントン政権時代は一貫して下がり続けてたみたいですね。
*参考・「図録・失業率の推移(日本と主要国)」
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/3080.html
(ちなみにクリントン政権は1993年から2000年まで)

こういうことがあるのに、いまだにマスコミは「社会主義は失敗したから、なにもかももうだめだ」といいつづけるのはホントおかしいですよ。
*後日追記:クリントン政権時代にアメリカでやった社会保障の不正受給を減らす政策というのは、『オバマショック』では「『福祉は労働の対価』という方針」としか説明されていませんが、具体的には「ワークフェア」というもので、生活保護の受給者を公共事業で働かせて、その間に職探しをさせるというものです。

話はそれますが、『オバマ・ショック』で、アメリカのマスコミにおける差別表現の扱いについて触れている部分は、国内の90年代のマスコミにおける文化人たちの論争にどっぷりつかった人たちとって、またもかなり衝撃的な部分ではないかとおもわれます。
この本では、アメリカの3大ネットワークや主流メディアは、リベラル派なので差別表現は自主規制しているという事実が紹介されています(p63)。たしかに、左派のリベラル派が差別反対の人権重視だとすれば、当然こうなるだろうとおもえます。

後発のネットワーク局やラジオやネットは右翼がおおく、それゆえに差別表現が放任状態なのだそうです(p63、173)。こういうアメリカの右翼というのは、このサイトで何度も説明しているように資本主義の全面肯定派のことですが、資本主義者の右翼というのは個人主義を是とするために、差別表現にもオープンであるということがわかります。

こうなると、国内で90年代に騒ぎになった「言葉狩り」論争とは一体なんだったのか?ということになります。あのときは、なぜか「差別表現を放任するべき」という意見をいうほうが「左翼」を自称し、それに対して、反動で民族主義天皇主義)の右翼がわけもわからず反発するという状態になり、結果として「差別表現を規制するのは右翼である」というような誤解にもとづいた図式が、日本社会に定着してしまいました。

筆者も国が表現規制するのは反対ですが、やはり差別表現はマスコミに自主規制をさせるように、市民から働きかけるほうがいいとおもいます。

で、話は戻りますが、今の日本は収入格差によって、恋愛ができるかどうか決まってしまうという状態になっていますが、そういうことならば、いっそのこと年収300万円以上稼いだ人から、300万円以上の額をすべて税金として徴収し、それを財政赤字の削減や公共投資への財源にするというのはどうでしょうか? つまり国民全員の収入を年収300万円にするという政策です(笑)。

もちろん、年収300万円以下の人には、足りない分を国が助成金をだして年収300万円にします。そのうえで医療費は無料、その他の公共サービスも無料のものを多くするのです。これなら恋愛格差と赤字と就職難と医療問題が一気に解決?するかもしれません(←ネタですので本気にしないように)。

補足:資本主義と社会主義の折衷的な「福祉国家」の成功例であるデンマークは、雇用政策が進んでいて、現在の日本の雇用問題の解決のヒントがあると思えます。デンマークの雇用政策をくわしく知りたい方は以下の日記をどうぞ。
『現実的な社会変革』(過去の記事です)
http://blogs.yahoo.co.jp/wandaba_station/55262715.html